■知って欲しい■
|
ナッツハウスを掃除していたら、髪の毛を引っ掛けてしまった。 片方だけ結び目が緩んでしまって、どうにも気になる。 「すみません、髪の毛ちょっと直してきてもいいですか?」 「ああ、いいよ。大丈夫、後はやっておくから」 「すみません」 ココが快く許可をくれたので私はもう一度頭を下げて二階へ上がった。 自分のバックの中からブラシと鏡を取り出して、一度全部髪を解いて梳かし直す。 階段の方でコト、と音がしたので鏡越しに見たら、シロップが吃驚したような、困ったようなフクザツな顔で映っていた。 「どうしたの、シロップ?」 振り返って聞くと、シロップはもっと困った顔になって視線を外す。 「いや・・・髪の毛下ろした所初めて見たからさ」 ああ、成程。 後姿を見て、誰だろうと思ったわけですね。 「下ろすと実は結構長いんですよ、私」 鏡に向き直ってちゃんと結んでしまう。 いつものスタイル。 そしてシロップがまだ同じ場所に立ったまま見ていることに気がついた。 鏡を仕舞いながらもう一度聞く。 「どうしたの、シロップ?」 「いや・・あのさ。変なこと聞くけど、それって染めてるのか?」 「はい?」 そんなこと聞かれるとは思っていなかったから吃驚して変な風に聞き返してしまった。 そうか、シロップは知らないんだ。 『私』のこと。 すっかり仲良くなって、もうずいぶん前から仲間だったような気になっていたけど、シロップとは知り合ってからまだ日が浅い。 当然知っていると思っていたことも、知らなかったのだと気がついた。 「私、お父さんがフランス人で、金髪なの。だからこの髪はお父さん似なんです」 「・・・知らなかった」 「うん、言ったつもりになってた。ごめんなさい」 謝って、ぺこりと頭を下げる。 「そうだ、今度また『お母さんのカレー』を作るから、シロップも皆と一緒に食べに来て?」 「『お母さんのカレー?』 「うん、お母さんが残してくれたレシピをみて私が作るの。シロップは辛いものはキライですか?」 「あんまり食べたことないから・・わかんないけど、まあ、食えっていうなら食ってやってもいいぜ」 「ふふっ」 素直には食べる、と言わないシロップに笑う。 「この前作ったときはココもナッツも美味しいって食べてくれたから・・シロップも気に入ってくれると嬉しいな」 シロップの知らない、『私』のこと。 もっと『私』のこと、沢山知って欲しい。 そしていつか シロップが自分のこと思い出したら 私にも沢山教えて欲しい。 「あと何か、言ってないことあったかな?」 指を当てて考えるけど、思いつかない。 皆がもう当然知ってることでシロップが知らないことって何だろう。 「・・シロップ、何か知りたいことありますか?」 聞いてみたら、シロップは赤くなって目を逸らした。 「どうしたの、シロップ?」 寄っていって下から覗き込む。
「・・・髪の毛、触ってみてもいいか?」
『長い髪』がシロップの覚えていない記憶の何かに引っかかるのかもしれない。 男の子に髪を梳かれるなんて初めてで、なんだか照れくさかったけど、シロップの好きにさせてあげた。
END
|
シロうら
明日の「〜裏切った?」の前に書きかけのヤツを慌てて仕上げてみましたよ(^^ゞ
2008.07.12