■プレゼント■
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TRICK OR TREAT! お菓子か、悪戯か!
「何をやっているんだ」 妙な物音に扉を開けるとカガリがナイフで何やらがりがりと削っていた。 危なっかしい手元を心配するアスランをよそにカガリはにっこり笑って答える。 「ジャック・オ・ランタンを作っているんだ」 「ジャック・オ・ランタン?」 ジャック・オ・ランタン。 お化けかぼちゃ。 ハロウィンのときにかぼちゃを削って作るものであることはアスランも知っているが、カガリの手元にあるかぼちゃはあまりに小さかった。 ランタンになるとは思えない。 それに普通はオレンジ色のかぼちゃを使うものではなかっただろうか。 聞き返したアスランが自分の持っているかぼちゃを見て疑問を持ったのがわかったようで、カガリは言った。 「これ、昨日採れたかぼちゃなんだ」 小さくて固い、真緑のかぼちゃ。 それをそっと手にもってカガリは続ける。 「食べられないから捨てるって言うから貰ってきた」
戦争で被害を受けたのは人間だけではない。 土は痩せて、農作物も育たない。 貯蓄があるうちはいい。 他の戦火を逃れた国から支援を受けられるうちはいい。 だけど、無くなったら? 生きていくために必要なものなのに。
また緑の大地となるまでにいったい何年かかるのだろう。
「モビルスーツの開発よりそっちの方が先なのにな」 小さく呟かれたカガリの言葉にアスランもそっと頷いた。 「ほら出来た!」 重くなってしまった空気を吹き飛ばすようにカガリが殊更明るい声をだして言った。 目の前に突き出されたかぼちゃは中を刳り貫いてはいないが、目と口の部分の皮を削って目鼻にし、『ジャック・オ・ランタン』風にはなっている。 色こそ緑色だが目鼻がオレンジで。 「へえ、上手いじゃないか」 感心して誉めるとカガリは嬉しそうに笑った。 それからアスランの手の中へそれを落とす。 「それ、やるよ」 「・・・ああ」 アスランは唐突なカガリの行動に戸惑いながらかぼちゃを受け取った。 指先にかすかな引っかかり。 ジャック・オ・ランタンの後頭部に何か文字が書いてるのに気がつく。 Happy birthday! 「ちょっと早いけどな」 カガリは前置きして笑った。 「来年はもっと大きいのを作ってやる」 大きなかぼちゃが育つ、本当に平和な世界で。 カガリの笑顔にアスランも笑った。 TRICK OR TREAT! お菓子か、悪戯か!
「じゃあオレは悪戯で返そうかな」 「何だそれ!」 アスランがおどけてかぼちゃにキスしてみせるとオーブ代表首長は真っ赤になって怒鳴った。
END
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ハロウィンに引っ掛けてお誕生日話。
早く平和になって欲しい。
2004.10.29