■ヴァレンタイン■
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元気になる魔法をください。
カガリが朝から台所を占拠してなにやらやっている。 今度はいったい何を始めたんだろう。 キラは甘い香りの充満したキッチンを覗き込んだ。 「何してるの、カガリ」 背中に声をかける。 「・・・チョコレートを作っているんだ」 「チョコレート?」 ちょっと振り返ってカガリは答えた。 確かにこの匂いはチョコレートだ。 しかしカガリが何故唐突にチョコを作り始めたのかがわからなくてキラは小首を傾げる。 「どこかの国では」 顔に疑問符を浮かべる弟にカガリが解説する。 「バレンタインにチョコを送るんだそうだ」 バレンタイン。 2月14日。 明日だ。 「・・・カガリ」 しかしバレンタイン、と聞いてキラの表情が曇った。 「わかってる」 その理由はもちろんカガリだってわかっている。 血のバレンタイン。 ・・・アスランの母親の亡くなった日。 「でも私はチョコが好きだからさ」 湯せんにかけたチョコをかき混ぜながらカガリは言う。 「好きなものを食べると元気にならないか?」 「ああ・・うん。元気出るよね」 カガリの意図がわかってキラは頷いた。 「甘いものは疲れてるときにもいいんだぞ」 「うん、そう言うよね」 キラにもやるからな、と姉はさらに付け加える。 バレンタイン、だから。 大好きな人に元気を出してもらいたいから。 さりげない優しさを行動に移せる人。 キラは微笑んだ。 「だから今日中に作ってアスランに持っていってやろうと思ってさ」 「・・今日中?」 バレンタインは明日なのだから明日渡せばいいのでは。 そう思ったキラが聞き返すとカガリは珍しく言い淀む。 「・・・だって明日はアイツ墓参りに行くんだろう?」 「うん」 キラは頷いた。 あの日からずっとバレンタインは母親の命日だから。 アスランは明日墓前に立つはずだ。 「私は一緒に行けないから」 「どうして?」 理由がわからずに問い返す。 明日は何も予定は入っていなかったはずだ。 「だって」 「多分、泣いてしまうから」 キラも人のことは言えないがカガリもかなり泣き虫だ。 他人の痛みを自分の痛みのように感じてしまう人。 「アスランの方が泣きたいはずなのに私が泣いちゃったら駄目だろう」 「・・そうかな」 キラはゆっくり言った。 「アスランが泣くかもって思うなら一緒に言ってあげるべきだと思うな」 「でも」 尚も反論しようとするカガリの台詞を遮って続ける。 「『泣いてる子をほっといちゃいけない』んだろう?」 あの時のように。 ・・・あれで自分は本当に気持ちが楽になれたから。 「わかった」 しばらくしてカガリは頷いた。 「これは明日持って行く」 「うん」 「アスラン、きっと喜ぶよ」
キラの言葉にカガリは嬉しそうに笑った。
元気になる魔法はいつだってキミがくれるんだから。
END
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アスカガにおいてバレンタインを語るのは難しいです。
キラとカガリしか出てませんが、アスカガと言い張ります(^^ゞ
キラはお姉さん大好きっ子ということで。
戦争が終わって双子で暮らしてるって感じで(捏造)
2003.09.21