■ぷりん■
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「何で此処に居るんだ」
食堂のドアを開けて思わずアスランは言った。 目の前ではそれはそれは幸せそうに金髪の行動派お姫様がプリンを口に運んでいる。 言っておくがここはエターナルの食堂であって、クサナギではない。 「アスラン」 カガリは語尾に『はあと』がつきそうな勢いで言った。 だがその『はあと』はアスランにつくわけではない。 プリンだ。 「此処のプリン美味いな」 大変嬉しそうなカガリを見ることはアスランにとっても幸せなことではあるが、それでは全然問いの答えにはなっていない。 「カガリ」 「此処のプリンはラクスが特別に作ってもらってるんだってさ。知ってたか?」 知らない。 が、元婚約者ならばそれくらいはするかもしれない。 何と言うか、別に我が侭なわけではないのだが妙に押しが強いというか。 何故だか何かしてあげたくなるタイプなのだ。 性格も見た目もかなり違うが天然お嬢様という点で目の前の人物と酷似しているかもしれない。 そのお嬢様達は同じ年頃ということもあってかいつの間にやら意気投合し仲良くやっているようだ。 アスランは小さくため息をつくと椅子に座ったカガリの前に立ち、最初の質問をもう一度繰り返した。 「何で此処に居るんだ、カガリ」 「プリン食べにきたんだよ」 そんなこともわからないのかよ、と言わんばかりの口調で悪びれもせずカガリは答える。 プリン食べにきた。 アスランは沈黙した。 来るだろうか、普通?わざわざプリンのために?艦が違うのに? 心のうちでものすごい勢いで自問したが実際プリンだけのためにそれをやってのけている人物が此処に居る。 「ラクスがいつでも来ていいって言ったんだ」 アスランの沈黙をどうとったのか言い訳するかのようにカガリが呟いた。 「カガリ」 いくらラクスが来ていいと言ったとしても、カガリはクサナギの艦長だ。 実質その責務はキサカがほぼこなしているとは言っても、そうそう艦を離れていいはずもない。 ここはカガリのために注意してやるべきだろうとアスランが口を開きかけたその時、いきなり顔の前にスプーンが突きつけられた。 「これ、本当に美味しいんだぞ」 満面の笑みでもってプリンが差し出される。 「一口食べてみろよ」 アスランは躊躇した。 「はい、あ〜んVv」と言わんばかりのこの状態に。 『カガリの笑顔』+『カガリが食べさせてくれる』+『カガリの使っていたスプーン』である。 あまりに美味しい状況に「本当にいいのか?!」と思ってしまう。 なんだか発想が親父くさいが。 だいたいこのお姫様は自分が何をやっているのかわかっているのだろうか。 人が落ち込んでいるとか、悩んでいるとか。 そういったことには聡いくせに何でこっち方面には激ニブなんだ。 アスランの呪詛は神様には届かない。 もちろん、想い人にも。 だが、結局。 アスランは誘惑に負け、差し出されるままプリンを口に入れた。 それは仕方がないことだ、アスランだって若い男子なのである。 好きな子にそんなことされたら他にどうしようもないのだ。 「な、美味いだろ?!」 「・・ああ」 カガリが嬉々として訊ねてくるが他のことで胸が一杯で味などわからない。 「もっと食べるか?」 お気に入りのプリンをアスランも美味しいと言ってくれたのが嬉しかったらしくカガリはさらに勧めてきた。 と、ここでドアが開いた。 「なにやってるの」 「キラ」 少々呆れたようなその声の主はキラだった。 アスラン同様食事にきたらしい。 何をやっているかって他人から見たら彼女にプリンを貰っているバカップッル以外に何者にも見えないんじゃないだろうか。 「アスランにプリンをあげていたんだ」 「へ〜」 キラはカガリの手元を覗き込んだ。 プリンはもうほとんど残っていない。 「すごく美味しいんだぞ。キラも頼むといい」 「そうなんだ」 にこやかにキラは言った。 「よかったね、アスラン」 「カガリにプリン貰えて」 さすが双子。 先ほどのカガリのように満面の笑み。 その笑顔に「ああ」とか「うう」とか答えながらアスランは背中を冷たい汗が流れるのを感じていた。 なんと言うか姉弟だとわかってからキラがどうも『ウチのお姉ちゃんに手を出さないでよね!』的な光線のようなものを発しているような気がして仕方がない。 気のせいだと思いたいのだが。 ハツカネズミになりつつあるアスランの横で双子は弟のプリンを仲良く分け合っていた。 END
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キラはカガリ大好き。カガリもキラ大好き。
双子が超仲良しなのは私の趣味ですVv
頑張れアスラン!(笑)
2003.08.14