■約束■
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求めるものは、この戦いの終結。
「カガリ、元気になったね」 モビルスーツの格納庫を臨む通路を通ろうとして、アスランは足を止めた。 前方にキラが居るのが見える。 窓に背を向けるように手すりに寄りかかっていた。 こちらにはまだ気がついていないようだ。 向かい合うように、もう一人。 親友に名を呼ばれた金髪の少女は笑って言った。 「ああ。いつまでもめそめそしてても仕方ないしな」 明るい、声。 まるで何でもないことのように。 だが何処かそれは固く、無理をしているように聞こえる。 そう思ったのはキラも同じだったらしくほんの少し表情が曇った。 「カガリ」 「別に無理してるわけじゃないぞ?」 キラの台詞を遮ってカガリは言った。 「私は私の出来ることをちゃんとやろうと思ったんだ」 ゆっくり歩きながらキラの隣に移動する。 「・・・私は『ウズミ・ナラ・アスハ』の娘だから」 それからカガリは自分に言い聞かせるように言った。 「キラもそう言ってくれたよな」 キラは黙って頷く。
「お父様は最後に言ったんだ。・・『私の父で、幸せであった』って」
「・・・私はお父様の言うこと全然聞かなかったのにな」 ガラスに額を当ててカガリは少し笑った。 淋しそうな笑み。 カガリの瞳に格納庫のジャスティスのボディの色が映る。 気のせいか潤んで見えるそれに初めて会ったときの映像が重なった。 イージスを指して叫んだカガリ。 『アイツはもっとたくさん人を殺すんだろう?!』 目に涙をためて銃を向けた――――― 「私はお父様が大好きだし、尊敬しているから」 過去形で語らないカガリをキラは見つめた。 「私の父は『ウズミ・ナラ・アスハ』だって胸を張って言えるようになりたいんだ」 「うん。カガリなら大丈夫だよ」 優しく笑うキラを見つめてカガリは言った。 「でも」 大きな瞳がキラを覗き込む。 「私はキラが大好きだから、ホントに姉弟だったら嬉しいぞ?」 ストレートな物言いにキラが返答に詰まる。 「何だよ」 とたんに不機嫌になってカガリは口を尖らせた。 アスランはその様子に吹きだしそうになる。 子供っぽいというか、可愛らしい。 「いや、カガリって真っ直ぐだなぁと思ってさ」 「何だよそれ」 カガリは小首を傾げた。 「普通はあんまり、その、はっきり好きとは言わないんじゃないかな」 「どうしてだ?」 キラはますます返答に窮してもごもごと口の中で呟いた。 このお姫様に納得してもらう答えを提示するのは難しそうだ。 「キラはすごく優しいし、いい奴だし、私は大好きだぞ?」 「・・・うん」 自分を映す正直な瞳に、キラは説明を諦めたようだ。 「僕もカガリが大好きだよ。兄妹だったら嬉しいな」 「本当か?!」 カガリは嬉しそうに声を大きくした。 そのままキラに抱きつく。 「じゃあキラは弟だからお姉さんの私の言うこと聞かなきゃいけないんだぞ」 「えぇ?!」 肩口に頭を預けたまま言い募るカガリにキラが抗議の声をあげた。 「なんで僕が弟なのさ」 「当たり前だろうそんなこと」 カガリは顔を上げてキラを見た。 キラの両肩に手を置いてきっぱりと言う。 「キラは泣き虫だから弟に決まってる!」 当然、と言わんばかりの口ぶりにキラは再び反論を封じられて沈黙した。 カガリも相当泣き虫だと思うのだが。 「私の言うこと、聞くか?」 「うん」 キラの降参の素振りに満足したのかカガリはもう一度キラの肩に顔を埋めた。
「お前、死ぬなよ」
「・・カガリ」 「約束しろよ、死なないって!」 顔を上げずに叫ぶ。 キラにしがみ付いたまま。 キラもカガリの背に腕を回した。 「うん」 「絶対だぞ」 「うん」 繰り返される、約束。
邪魔をしてはいけないような気がしてアスランはそっとその場を離れようとした。 「・・アスラン」 しかしキラに気づかれてしまう。 名を呼ばれて気まずく振り返るとカガリが飛んできた。 「アスラン、お前も私の言うことを聞けよ」 「えっ・・」 唐突に偉そうに宣言されて反応が遅れる。 「友達のお姉さんの言うことは聞くものだろう?」
何処からその理屈がくるのかさっぱりわからなかったが、アスランは反論しなかった。 望むものは、戦争の終結。
誰ももう悲しい涙を流さなくていい世界。 キミがもう、泣かなくてすむように。
END
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3人が居るのはカガリがキラに写真を見せた場所。
カガリがアスランに「まだお父さんと話できるかもしれないじゃないか」みたいに言ってくれたところ。
の、つもりです(^^ゞ
2003.08.09