|
「どうした、直斗」
直斗が完二の方を見ているのに気が付いて、悠は声をかけた。
直斗は首を振った。
「いえ、何も」
「そうか…ならいいが。なにか悩み事でもあるのかと」
悩み事やコンプレックスはテレビの中の世界では致命傷となりかねない。
そう言うと直斗は思い直したようで悠を見て言った。
「巽くんはボクの事が嫌いなんでしょうか」
「何故そう思う?」
「彼は皆さんに対する態度とボクに対してとではまるで対応が違います。ボクが新参者であるということもあるでしょうが、扱いがわからない…どう接したらいいか迷っているようだ」
鋭い。
さすが探偵だ、と悠は思った。
多分、完二は直斗のことを女の子として意識し始めている。
そしてその感情をどうしたらいいかまだ自分でわかっていない。
「それで『嫌い』だと?」
「はい…いいえ」
直斗は一度頷いたがすぐにそれを否定した。
「巽くんはおそらくそういうことははっきり態度に出すタイプだと思うんです。学校で見る限り、教師に対する態度はまさにそうだ。彼は粗野で乱暴者に見えるが繊細で優しい面も併せ持っているから、嫌いな人間でも命の危機に面しているとなれば助けに来てくれるでしょう…けれど」
乱暴者だが優しい面もある。
直斗は本当によく人を見ている。
それは探偵としての才なのか、それとも少しは完二を意識しているからなのだろうか。
「直斗は素晴らしい探偵だね」
「いえ、そんな…人の心ほど分かりにくいものはありません」
直斗は少し先を歩く完二の方を見た。
感情が態度に出る完二が、自分に対してだけ違う対応をするのが、何故だかわからないのだ。
それは完二にとって直斗が他とは違う、他に代わりの無い人だからだ。
それに気が付いてあげて欲しい。
悠は言った。
「そうかな。自分で今言ったじゃないか、完二ははっきり態度に出すって。わかりやすいよ」
「そう、でしょうか…」
まだ納得のいかない様子で直斗は言った。
けれどこの子はとても賢く敏いから、ほどなく答えに辿り着くだろう。
答えは、自分で見つけて。
完二の気持ちを勝手に言うのはルール違反だと思うから、今自分が出せるヒントは此れだけだ。
END
|