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「アコはホントに音吉さんが好きなんだなあ」
隣で奏太が言う。
今日も自分は傘があるくせに、帰らずに人に付き合って残ってる。
一緒に居てくれる。
「大好きよ、優しいし」
アコは言った。
「お祖父ちゃんは絶対私に嘘をつかないもの」
パパとママが恋しくて泣いている時もすぐに来てくれる。
いつだって寂しい時には側に居てくれる。
寂しい時は絶対に側に居て、一人にしないと言った。
お祖父ちゃんは私に嘘をつかない。
だから。
この間来てくれなかったのは、私が寂しいと思わなかったからじゃないだろうか。
奏太が居たから。
奏太が一緒に居てくれたから、私はあの時寂しくなかった。
実際はノイズの一件でバタバタしていたせいだったけれど。
「あ、来たぜアコ」
奏太の声に顔を上げる。
門の向こうに傘を持った音吉が歩いてくるのが見えた。
「じゃあな!」
奏太は自分の傘を差すと駆け出して行った。
その後ろ姿を見ながらほんの少し、寂しい、と思った。
*
「音吉さんさよなら」
「ああ、奏太くんさよなら。気を付けてな」
はあい、と元気な声を残して奏太は駆けて行く。
その後ろ姿を見送って、アコの方に向き直った。
アコは、自分を見ていなかった。
去っていく奏太の背中を見ていた。
「一緒だったのかね」
アコは頷いた。
「うん。自分の傘あるくせに、馬鹿みたい」
さっさと帰ればいいのに。
口調は辛辣だが、表情は其れを裏切っている。
「…奏太くんは優しい、いい子じゃな」
返事は無かった。
ただ僅かに髪が揺れた。
子供の成長は早いものだと思う。
この可愛い孫は何時まで自分と一緒に帰ってくれるだろう。
そんなことを考えるとほんの少し、寂しい、気がした。
END
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