■焼おにぎり■
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家に帰ってもロクに食べるものもないし、テキトーにその辺で食べてくか、と吾代は馴染みの居酒屋に寄ろうと足を向けた。 其処まではよかったのだ。 しかしうっかり店先で上司の一人と目が合ってしまった。 こんなところをうろうろしているとは予想外だった。 冷静になって考えれば、職場も近いし、居ても不思議はないのだが。 見ないフリをして中に入ろうかと思ったが、あっさり失敗した。 大きく手を振りながらこちらに走ってくる。 「吾代さーん!!」 声まででかい。 「今帰り?」 「あ゛−」 「私もー。ネウロってば人使い荒くてさーもうお腹空いちゃったよー」 「あ゛−」 「・・・これからご飯なの?」 居酒屋の暖簾を見上げてヤコが聞いた。
其処で追い返すべきだった、と吾代は思った。
「よく食うな、お前」 「だって美味しいんだもん。やっぱ焼きおにぎりは美味しいよね!」 そう言いながらヤコは2つ目の焼きおにぎりに手を伸ばす。 どうみても未成年者だが居酒屋に居ることについて周りからは特に何もない。 吾代のみるからにソッチ系の容姿のせいもあるだろうが。 ヤコも特にその辺は気にしていないようだ。 ちなみに最初のオーダーで『とりあえず』と言って頼んだ出し巻き玉子とから揚げとねぎまとたこわさと焼きおにぎりの皿はすでに綺麗に片付けられて、2度目のオーダー品が並べられている。 噂に違わぬ食欲だ。 吾代が呆れながら、とりあえず自分が頼んだ中生に口をつける。 するとヤコが聞いてきた。 「吾代さんは食べないの?」 「喰うよ!」 吾代はヤコが手を伸ばしてきた、ツマミのもずく酢の小鉢に箸を突き刺した。 ち、と短くヤコが舌打ちする。 この野郎、と吾代が毒づく間もなくヤコは手を上げて店員を呼んだ。 「すいませーん。ポテトと手羽先と寄せ豆腐と焼きおにぎり2個くださーい」 「どんだけ食う気だ!」 「だって美味しいんだもんー美味しいもの食べると幸せな気分になるよね」 「あーそうかい」 相手するのも馬鹿らしくなって適当に流す。
食べ物が美味しいとか。 幸せな気分になるとか。 あんな化け物と一緒に居て、こき使われてるというのによくまあそんな能天気な事を言っていられるものだ。 しかしもぐもぐと口を動かすヤコは本当に幸せそうなのだ。
根っからお目出度いヤツなのだろう。
しかしこうやって奴らに付き合っている自分だってそうとうお目出度いお人よしなのだ。 しかも最近はそれが嫌ではなくなってきている自分が居る――――――。
「後、揚げだし豆腐食べてもいい?」 遠慮しているフリをしながらヤコが聞いてくる。 「あーもうなんでも勝手に食え」 そんでさっさと帰れ、と続けようとした吾代の言葉はヤコの声に遮られた。 「すいませーん!揚げだし豆腐とホッケと肉じゃがとごぼうのサラダと焼きおにぎり3つくださーい!!」
ぷち、と何かが切れる音がした。
「揚げだし豆腐だけじゃねぇのかよ!!」 吾代の怒声が店内に響き渡った。
END
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ちょっと吾代→ヤコ風?(^^ゞ
吾代さんはとっても面倒見がいい人だと思います(笑)
付き合いもいいよね。
さてヤコたんは焼きおにぎりを何個食べたでしょうか?(笑)
揚げ出し豆腐は私が好きなので。
2006.07.26