■喉飴■

 

 

父親の亡くなった事件の謎が解けて、望んだ『日常』が戻ってきたと思った。

 

 

 

 

 

学校帰りにちょっとコンビニへ寄って新しいデザートをチェックしようとしたら、魔人に拉致られた。

正確に言うと拉致られた、ではなく、自主的に出頭したのだ。

半ば観念して。

誰だってあんな所から自分を見ている視線に気がついたら、そうせざるを得ないと思う。

コンビニの窓の外、しかも人類にはありえない上部から、ガラスにぺたりと張り付いてネウロが見ているのに気が付いたヤコは買い物もそこそこにバタバタと店を飛び出す羽目になったのである。

ヤコが出てくるなりネウロは言った。

「寄り道などせずに、まっすぐ事務所に来い、ヤコ」

「これから行くつもりだったんだってば」

ヤコの言い訳などまったく聞く気のないネウロは自分の要件だけを告げる。

「近くで謎の生まれる気配がする。行くぞ」

「・・お腹空いたからちょっとだけ買い物しちゃ駄目かなぁ?」

ヤコは控え目にお願いしてみた。

もちろん魔人が頷いてくれるはずがないのはわかっている。

しかもこの後また何か酷い目に合わされるに違いないとは思う。

それでもヤコは空腹を訴えた。

本当にお腹が減っていたのだ。

しかし案の定ヤコの願いは聞き届けられなかった。

「安心しろ、ヤコ。我輩も空腹だ」

「・・・安心しろって、何よそれ・・?」

 

腹へリ仲間ってわけですか?

 

ヤコの疑問符に返事もせずにすたすたと歩き出したネウロを仕方なく追う。

あまりうだうだ言っていると、酷い目に合うのは経験上もうわかっているからだ。

ああ、お腹減った。

しかしあのどたばたの中コンビニで唯一買うことが出来たのはのど飴だけだ。

それでも根性で買ってきただけ、エライと思う。

どうも風邪気味で喉が痛いので必要に駆られて買ったものだが、あいにくこれでは腹は膨れない。

ふう、とため息をついてヤコは前方を歩く魔人の後頭部に目をやった。

 

腹へリ仲間。

 

確かに、そうかもしれない、と思う。

 

ようするにネウロもヤコも『食べることが好き』なのだ。

 

美味しいものをお腹いっぱい食べる幸せを、自分は知っている。

ネウロもただその幸せを思いっきり味わいたいだけ。

 

ただ食べられるものが人間とは違うだけで――――――

 

 

 

其処まで考えて、ヤコは否定するように頭を振った。

なんだか仲間意識が芽生えてしまったことにちょっとブルーになる。

ネウロはヒトではない。

魔界の謎を食べつくしてしまった、という魔人だ。

その人外ぶりはヤコも多々見てきている。

最近はかなり慣れてきたが。

 

 

いやいやいや!

私、人間だし!

 

 

自分に言い聞かせるように拳を握り締めると、ヤコはのど飴の袋を開けた。

 

がりがりと齧ると、喉だけはすっきりとしたが胸のうちは複雑だった。

 

ちょっと最近この『日常』に慣れすぎかもしれない。

 

 

 

END

 

 

 

 

 

 

 

趣味は「美味しいものをお腹いっぱい食べること」

趣味が合う二人は似合いのカップルだと思うのですが(^_^)

 

いろいろ難もあるけどね。

ネウロSだしなー(笑)

 

2005.09.19