■魔法律家■

 

 

自分の仕事に誇りを持っていた。

この職に就けたことが誇らしかった。

 

 

 

「つっ・・!」

立ち上がると右足首がずきりと痛んだ。

無理も無い。

あの高さから飛び降りたのだから。

見上げる天井にぽつかりと大きな穴。

あそこから飛び降りた。

運動神経が抜群、という方ではないのだから此れくらいですんで幸運だった、というべきだろう。

 

こちらを追ってくる気配は無い。

敵、は。

彼女の標的は六氷透、ただその人のみなのだろう。

 

「足手まといにはならなくてすんだ、ということか」

とりあえず、と小さく呟いた。

 

私はあそこに居ても、きっと役には立たない。

*******

 

「前田さん!」

大きな音を立てて扉を開けると怯えた目がこちらに向けられた。

もともと若くは無いがこの数日で確実に老け込んだように見える。

「今井裁判官」

その顔がこちらを認めてほっとしたような表情になった。

「ソフィーは・・ソフィーはどうなりましたか?」

「ソフィーは六氷殿が裁きました」

「・・・よかった」

 

そう、よかった。

 

だが。

 

「落ち着いて聞いてください、前田さん」

だが、シナリオは最悪の方向へ転がった。

 

 

「リオ師が、裏切った」

 

 

*******

「今井裁判官」

 

「私はもう年寄りです、連れて行っても足手まといになるばかりだ」

此処は危ないからと、連れ出そうとすると監獄守はそれを拒んだ。

 

足手まとい。

 

それは監獄守のことではない。

 

「どうか置いていってください」

さらに前田は言い募る。

「貴女は六氷殿のところへ・・」

 

そうだ、わかっている。

今すべきことは練の尽きた六氷殿を守ること。

草野だけでは荷が重いはず。

 

だが。

 

「私は」

 

「あなたを守りたいんです、前田さん」

 

監獄守で残ったのは一人。

 

ただ、ひとり。

 

後はみなソフィーの餌食になってしまった。

 

藤原、も。

 

ワタシハダレモ守レナカッタ

 

部下だったのに。

 

「貴方に、生きていて欲しいんです」

せめて、ただひとり生き残った、監獄守だけでも。

勝手な願いだとわかっているけれど。

 

自分の仕事に誇りを持っていた。

この職に就けたことが誇らしかった。

 

だけど、守れなかった。

誰も、守れなかった。

 

「ならば」

初老の監獄守は言った。

「やはり六氷殿の応援に行くべきだ」

さらに監獄守は言葉を続ける。

「私も一緒に行きます」

「だが」

危険です、と言いかけた言葉は眼鏡の奥の光に遮られた。

優しい、色。

「私を置いていくのが嫌なのでしょう?・・・・だったら私も一緒に行きます」

「前田さん」

「今井裁判官」

監獄守が名を呼んだ。

「貴女はとても責任感の強い立派な裁判官だ」

違う、と口の中で呟く。

「自分を犠牲にしても館内に残って札を貼り、私たちを守ろうとした」

「でも」

守れなかった。

「いいえ」

監獄守はゆっくり首を振った。

緩やかだが断固とした否定。

「貴女のおかげで私は今此処にいるんです」

「・・・前田さん」

「貴女は責任感の強い人だ」

監獄守は繰り返した。

「此処で六氷殿の助太刀に行かなければ、後悔しますよ」

 

後悔。

 

また自分は助けられなかったと。

守れなかったと。

 

自分の仕事に誇りを持っている。

 

生きている人間を、守る仕事だからだ。

 

「前田さん」

顔を上げると監獄守はにこりと笑った。

「六氷殿たちは島の裏手に回られたようですね」

見れば複数の足跡が地面に残っていた。

確かにそれは島の裏の方へと続いている。

そして誰かが札を使った形跡。

 

誰か応援が来たのだろうか。

 

「行きましょう」

 

足手まといになりたくない。

だけど、自分に出来ることがしたい。

 

後悔しないために。

 

守る、ために。

 

 

 

自分の仕事に誇りを持っている。

 

 

 

 

誰かを守るための、仕事だから。

 

 

 

END

 

 

 

 

ムヒョロジ。とは言っても今井裁判官のお話でした(^^ゞ

第30条の後くらいで。

今井裁判官に夢見すぎ。

自分の仕事に誇りを持っている

責任感の強い人だと思うのです。

 

いずれ執行人になってくれたらいいな。

 

つか今後の展開で実は彼女もエンチュー側だった・・なんつーたらどうしよう(^^ゞ

2005.07.15