■しんらい■

 

 

ラグのこころの欠片が、赤い光を放ちながら、鎧虫の弱点へと吸い込まれて行った。

最後の一体が外側の固い甲羅だけを残してばらばらになる。

それを確認して、ザジは岩から飛び降りた。

「大丈夫か、ラグ」

「うん、ありがとうザジ。助かったよ」

『こころ』をかなり消費したのか、座り込んでいたラグを手を貸して立ち上がらせる。

「此処等は鎧虫のテリトリー外なはずなんだけどなぁ。まあ寄ってみて良かったぜ」

そう言うとラグはもう一度ありがとう、と礼を言った。

同じテガミバチ仲間なのだから、礼を言われるほどのことでもないけれど、寄り道してよかった、とザジは思う。

自分の配達の帰り、この先にラグも配達に来ているのを思い出して寄り道してみたら、鎧虫の大群に捕まっているラグを発見した、というわけだ。

この後輩テガミバチは、どうにも泣き虫で、ちょっとしたことでボロボロ泣きだすせいか、目が離せない。

また泣いているのではないかと、心配になってしまう。

最初に、ゴーシュ・スエードのことで泣かせてしまったせいもあるだろうか。

大切な人が居なくなる、その辛さはザジだってわかっているから。

「ザジ?」

黙ってしまったザジを、ラグが見上げて名を呼んだ。

ちょっと思考が昔へ飛んでしまった。

何でもない、と答えて、誤魔化す様に話題を変える。

「そういや、精霊琥珀もいろんな色あるけど、赤いのって初めて見たわ」

ラグの眼を覗きこんでザジが言う。

「・・・・」

「ん?何だよ」

じっと見つめ返してくるラグに、ザジが問い返す。

何か悪いことでも言っただろうか。

口が悪い自覚はある。

「此れは、お母さんがぼくの病気を治すために使ったんだって言ってた」

「へえ。精霊琥珀はすごい力が封じ込められてるっつーしな」

「うん・・・」

頷いて、ラグはにへへと笑った。

「何だよ、気持ちわりいな」

「この石のことは、誰にも言っちゃいけないって言われてたんだ」

嬉しそうにラグは言う。

 

「こころから信頼できる人にだけ打ち明けなさいってお母さんに言われてたんだ」

 

「あっそ。・・つかもう皆知ってんじゃん」

やや呆れ気味にザジは言った。

ラグが心弾銃を使うための精霊琥珀が左目に填まっていることは、ザジを始め、コナーやシルベット、もうずいぶん沢山の人間が知っていることだ。

内緒だった、なんてことが初耳、というか今更な話だと思う。

「うん」

ザジの言葉にラグは頷いた。

「ぼく、いつの間にか信頼できる人がいっぱい増えてた」

嬉しい、と言ってラグは笑う。

 

泣き虫のくせにこんな風に笑うから、また目が離せなくなってしまう。

 

「それじゃオレ達もう『友達』だな」

ザジがそう言うとラグはまた笑った。

 

 

 

END

 


ラグとザジ。

ニッチの出番を入れられなかった;

目の精霊琥珀は心弾で使いまくってるからもう皆知ってるなぁと思いまして。

ザジは口悪いけどすごくいい子で大好きです。

 

09.11.01